1998 年 54 巻 2 号 p. 119-126
梵鐘の音の減衰時間に時代的変遷があることを前報で示した. 本報は, 奈良時代から昭和期までに制作された梵鐘206口について, 部分音の構成に関する時代的変遷について論じる. 時代区分ごとに求めた本測定の基音周波数の近似式は, 平均で2.8%以内の精度で基音周波数を推定することができた. 梵鐘の音の基音周波数に対する部分音の周波数比は, 音の減衰時間と同じく, 梵鐘の口径と駒の爪の厚さとの割合に密接な関係があり, それらが梵鐘の音の時代的変遷の一つの要因であると推定した. また, 部分音の音圧レベル分布の時間的な変化及びスペクトル数にも時代的変遷があることを確認した.