ニホンザルのクー・コールという音声は,その音響的特徴に集団差があることが知られている。これが形成された要因として,生息地における音響的な環境が異なることが考えられる。そこで集団差のあることが示されている大平山集団と屋久島集団のそれぞれの生息地で音の伝搬特性を調べた。生息地における音の伝搬効率の違いから,大平山集団の比較的低い周波数の音声はその生息地でより伝搬され易い性質を持っていることが示された。一方,屋久島集団の生息地では,どちらの集団の音声も伝搬のされ易さに差がなかった。大平山集団の音声は,生息地で伝搬され易く,音響的な環境が音声の集団差を形成した要因である可能性が示唆された。