2000 年 56 巻 10 号 p. 683-694
単語音声の視覚刺激と聴覚刺激のそれぞれに時間変形を加えた刺激を用いて, 発話の時間構造知覚とその視聴覚情報統合過程について検討した。視覚, あるいは聴覚のみの単独刺激提示では, 視覚条件よりも聴覚条件の方が時間変形に対する弁別が良好であった。視聴覚の同時提示では, ほぼ聴覚刺激に依存した判断がなされていることが示唆された。更に, 他方のモダリティに時間変形を加えない刺激を提示した場合, 単独条件よりも正答率が低下し, またこの変形を加えない刺激による干渉は視覚刺激よりも聴覚刺激の方が大きかった。信号検出理論を適用し, 視聴覚の情報統合における重み付けを推定した結果, 聴覚に対する重み付けが多くとられる傾向が示唆された。