2000 年 56 巻 10 号 p. 713-720
周波数掃引帯域除去フィルタと同期加算法による非線形歪測定法を用い, 複数のスピーカ及びヘッドホンについて, 可聴域の非線形歪を測定した。入力レベルを1Wとした場合のスピーカの非線形歪率は, -35dBから-65dB程度まで広く分布していた。また, 入力レベルを1mWとした場合のヘッドホンの非線形歪率は, -65dBから-80dB程度であった。周波数掃引音再生時の全高周波歪率と疑似雑音再生時の平均非線形歪率を比較した結果, 両者の関係には, かなりのばらつきが観察された。結果から, 高周波歪率だけでは, 実用場面での電気音響変換器の線形性を正確に評価しがたいことが示された。