日本音響学会誌
Online ISSN : 2432-2040
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脳における感覚情報の時間的符号化(<小特集>聴覚と脳)
カリアニ ピーターA.藤崎 和香柏野 牧夫
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2001 年 57 巻 3 号 p. 234-243

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抄録

様々なモダリティにおける感覚特性の時間的符号化についての神経生理学的, 心理物理学的な証拠について考察する。神経パルスによる符号化の種類には, 1)チャンネル符号(複数のニューロン相互間の活動パタン), 2)時間的パタン符号(スパイクパタン), 3)スパイク潜時符号(相対的スパイクタイミング)などがある。このうち2)3)の時間的符号化は, スパイクの相対的タイミングが(スパイクの数よりも)情報機能を決定する符号化である。刺激に依存した神経応答の時間的パタンは化, 刺激との時間的相関(位相固定), 応答潜時, 発火の時間推移の特徴など, 神経固有の性質と外来的要因の両方の理由によって生じうる。位相固定は, 聴覚, 機械受容感覚, 電気受容感覚, 自己受容感覚, そして視覚にも豊富に見られる。位相固定した系では, 感覚器表面間の時間差を時間的相互相関で分析することによって, 位置や動き, 空間的形状を表現することができる。位相固定の限界までは, 全次数のスパイク間隔パタンが刺激の自己相関関数を反映しており, 形状の表現に利用できる。刺激に依存した固有の時間応答の構造はすべての感覚系に見られる。刺激の性質を符号化していると考えられる特徴的な時間的パタンは, 化学感覚(味覚, 嗅覚)にも, 皮膚感覚にも, 視覚のある種の属性(色, 形状)にも見られる。幾つかのモダリティ(聴覚, 味覚, 色覚, 機械受容感覚, 痛覚)では, 特定の時間的パタンを持った電気刺激によって, ある特定の感覚属性が生じる。

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© 2001 一般社団法人 日本音響学会
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