日本音響学会誌
Online ISSN : 2432-2040
Print ISSN : 0369-4232
57 巻, 3 号
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  • 神沼 充伸, 伊勢 史郎, 鹿野 清宏
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 175-183
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    多数の音源を用いた音場再現システムは, その逆フィルタ設計において膨大な計算量が必要となり現在の計算機の能力によって実現することは非常に困難である。本論文では, まず現実的な計算量で逆フィルタを設計するために, 最小ノルム解を用いた逆フィルタの設計手法を提案する。次に, この手法を用いた場合の音源の数が逆フィルタの性能に及ぼす影響について, 理論的検討及び計算機シミュレーションによる検討を行う。更に4個及び8個の音源を用いて2点の音圧を制御する音場再現システムを作成し, 水平面定位の音像定位感について主観評価によりその性能を調べる。これらの検討と調査の結果, 音源の数の増加が逆フィルタの性能の向上に寄与することを明らかにした。また, 本手法を用いた音場再現システムが, 残響の存在する環境において実現可能であることも確認した。
  • 加藤 裕一, 大月 隆一, 山口 静馬
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 184-191
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    本論文は従来, ほとんど考察されていなかった中・少交通流での道路騒音を把握することを目標として, 観測データから得られた知見を基に, 現像をモデル化し, 定量化する一手法を提案するものである。具体的には, 1)観測データに従来の予測手法を適用したのでは, かなりの誤差が生じ, 新たな定量化手法が必要であること, 2)観測データから, 考察対象の特徴(パラメータ)を抽出して, レベル分布の構成法を提案し, 実験的にその正当性・有効性を示している。更に, 3)2)でのパラメータの予測手法を実測データを利用して検討している。
  • 岡田 恭明, 吉久 光一, 久野 和宏
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 192-199
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    トンネルは時として音の伝搬を助長することが知られている。本稿では, そのメカニズムを説明するため, 音線理論と坑内におけるエネルギー収支を基に, 音の強さに関する伝搬式を導出し検討を行った。トンネルの存在がもたらす受音レベルの増加(挿入利得)は, トンネルの寸法(長さ, 断面積, 周長)及び内表面の平均吸音率を基に算定できることを示した。更に, 受音側の抗口周辺において, この利得(トンネル効果)の広がりについて考察を加えた。
  • 野村 英之, 鎌倉 友男
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 200-209
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    流体力学の支配方程式を数値計算することで, 近距離場音波浮揚システムの空隙内音場を予測する。その結果は, 音波の非線形性よりもむしろ音響エネルギーの洩れの方が音場に著しく影響を与えることを示している。円板に働く浮揚力は, 円板底面の応力の時間平均として求める。数値シミュレーションは, 浮揚距離が線形波動理論から予測される浮揚距離よりも小さいことを明示している。実験は周波数19.5kHz, 口径40mmのピストン音源, 及び直径, 厚さの異なる8種類のアルミニウム円板を用いて行っている。実験で得られた浮揚距離は理論とよく一致する。提案した理論モダルは, 近距離場音波浮揚における正確な浮揚距離の予測に十分有効であることが判明した。
  • 河原 達也, 李 晃伸, 小林 哲則, 武田 一哉, 峰松 信明, 嵯峨山 茂樹, 伊藤 克亘, 伊藤 彰則, 山本 幹雄, 山田 篤, 宇 ...
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    「日本語ディクテーション基本ソフトウェア」は, 大語彙連続音声認識(LVCSR)研究・開発の共通プラットフォームとして設計・作成された。このプラットフォームは, 標準的な認識エンジン・日本語音響モデル・日本語言語モデル及び日本語形態素解析・読み付与ツール等から構成される。99年度版では更なる高精度化・高速化そして大語彙化がなされた。本稿ではその仕様を述べると共に, 20, 000語彙及び60, 000語彙のディクテーションタスクにおける要素技術の評価を報告する。本ツールキットは, 無償で一般に公開されている。
  • 柏野 牧夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 215-218
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
  • 下條 信輔, シャイア クリスチャン, ニジャワン ロミ, シャムズ ラダン, 神谷 之康, 渡辺 克巳, 岡田 美苗, 柏野 牧夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    聴覚刺激による視知覚の変容に関する三つの新しい発見を概説する。第1に, 視覚的な時間分解能は, 音が付随すると, 視聴覚刺激の時間系列及び遅延に依存して, 向上もしくは低下する。第2に, 単一の視覚フラッシュは, 複数の音と共に提示されると, 複数のフラッシュとして知覚されることがある。第3に, 互いに近づくように動く二つの物体からなる多義的な運動パタンは, それと同期していない音が鳴っても, あるいは音がなくても, 二つの物体が交差してまっすぐ動いていくように知覚されるが, 二つの物体が重なった時点に同期して音が鳴ると, それらの物体が衝突して反発するように知覚される。これらの発見に基づいた著者らの主張は, 従来信じられてきた視覚優位性に反して, 聴覚が強力な過渡的信号を与える場合には特に, 聴覚が視覚を変化させるというものである。
  • 古川 茂人, ミドルブルックス ジョンC., 加藤 正晴, 柏野 牧夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 226-233
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    中脳には聴空間と1対1に対応するマップ(機能地図)が存在することはよく知られている。そこではそれぞれのニューロンが特定の音源位置に対して同調していて, 一つの神経構造の中では各ニューロンの最適音源位置が空間的に規則正しく配列されて(トポグラフィックに)表現されている。ところが, 正常な音源定位のために聴覚皮質が重要なことは周知の事実であるにもかかわらず, 聴覚皮質にこのような聴空間マップが存在する証拠を見出そうという試みはすべて失敗に帰している。皮質のニューロンは概して空間的な同調特性が鋭くなく, 最適音源位置もトポグラフィックに組織化されていない。ここでは, 代替仮説を提案する。それは, ニューロン一つ一つが空間特異的にスパイクの時間的発火パタンを変化させることで, 聴空間を全方位的(panoramic)に表現しているというものである。ある特定の音源位置についての情報は, 多数のニューロンの集合に分散しており, これらニューロンの情報をまとめることによって, 正確な音源位置が決定できると考えられる。生理学的実験データを人工神経回路アルゴリズムで解析したところ, 個々のニューロンのスパイクパタンから音源位置を360度の全方向にわたって同定することができた。行動学的に測定した動物の音源定位判断の精度を説明するには, さほど多くない数のニューロンの集合によってもたらされる情報量で十分であることが分かった。
  • カリアニ ピーターA., 藤崎 和香, 柏野 牧夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 234-243
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    様々なモダリティにおける感覚特性の時間的符号化についての神経生理学的, 心理物理学的な証拠について考察する。神経パルスによる符号化の種類には, 1)チャンネル符号(複数のニューロン相互間の活動パタン), 2)時間的パタン符号(スパイクパタン), 3)スパイク潜時符号(相対的スパイクタイミング)などがある。このうち2)3)の時間的符号化は, スパイクの相対的タイミングが(スパイクの数よりも)情報機能を決定する符号化である。刺激に依存した神経応答の時間的パタンは化, 刺激との時間的相関(位相固定), 応答潜時, 発火の時間推移の特徴など, 神経固有の性質と外来的要因の両方の理由によって生じうる。位相固定は, 聴覚, 機械受容感覚, 電気受容感覚, 自己受容感覚, そして視覚にも豊富に見られる。位相固定した系では, 感覚器表面間の時間差を時間的相互相関で分析することによって, 位置や動き, 空間的形状を表現することができる。位相固定の限界までは, 全次数のスパイク間隔パタンが刺激の自己相関関数を反映しており, 形状の表現に利用できる。刺激に依存した固有の時間応答の構造はすべての感覚系に見られる。刺激の性質を符号化していると考えられる特徴的な時間的パタンは, 化学感覚(味覚, 嗅覚)にも, 皮膚感覚にも, 視覚のある種の属性(色, 形状)にも見られる。幾つかのモダリティ(聴覚, 味覚, 色覚, 機械受容感覚, 痛覚)では, 特定の時間的パタンを持った電気刺激によって, ある特定の感覚属性が生じる。
  • 管 乃武男, 高 思泉, 馬 暁峰, 酒井 雅史, チャウドリィ サイードA., 柏野 牧夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 244-250
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    聴覚系には上行系と下行系(皮質遠心系)とがある。皮質遠心系の主な機能の一つは, 皮質下の神経核における聴覚情報処理の調整と改善, すなわち, 皮質ニューロンへの入力の調整と改善である。皮質遠心系は, 音信号が動物に対して繰り返し与えられると, 下丘, 内側膝状体, 及び聴覚野に, 小規模な短期的再組織化(可塑性)を引き起こす。そのような音信号が条件付け(連合学習)によって動物の行動に関連付けられると, 短期的な再組織化が増強され, 聴覚野の長期的再組織化へと変容する。動物は, 行動にとっての音の意味を連合学習によって獲得する。人間の乳幼児もまた, 連合学習によって言語を獲得する。従って, 皮質遠心系は, 行動上意味のある音を処理したり, 音の行動上の重要性に応じて聴覚野を再組織化したりする上で, 特に重要な役割を果たすと予想される。上行系と下行系は複数のフイードバック・ループを形成しているので, 上行系と下行系相互作用を詳しく調べることなしには, 聴覚情報処理の神経機構を適切に理解することはできない。
  • Robert J. Dooling, Micheal L. Dent, 岡ノ谷 一夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 57 巻 3 号 p. 251-257
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
    鳥類における有毛細胞の再生現象が発見されて10年を超えたに過ぎないが, すでにこの発見により脊椎動物の聴覚系に関して新たな研究テーマが幾つも派生してきた。ヒトが発話の音声を学ばなければならないのと同様に, 鳥類もまたコミュニケーションに使う複雑な種特異的音声を学習せねばならないことから, 鳥類における有毛細胞の再生現象は更に興味深い研究課題となる。このような課題の一つとして, 聴覚障害と音声産出の関係がある。また, 聴力の回復に伴う音声行動の変化も重要なテーマである。この論文の目的は, 鳥類における有毛細胞の喪失がどのような機能的及び行動学的結果をもたらすかについての知見をレビューし, ヒトの聴覚障害を理解する上での妥当性を指摘し, 将来の研究方針を探ることにある。
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 57 巻 3 号 p. 258-259
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー
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