日本音響学会誌
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相反法による頭部伝達関数計測に用いる耳栓スピーカの音響特性
松永 悟行平原 達也
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2011 年 67 巻 8 号 p. 331-338

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抄録

頭部伝達関数は相反法を利用することにより短時間で計測できる。相反法を利用した頭部伝達関数の計測には超小型スピーカユニットをシリコーン印象材に埋め込んだ耳栓スピーカが必要となる。この耳栓スピーカに用いる三種類の超小型スピーカユニット(DTEC-30008,ED-29689,SR6438NWS,Knowles)を自由空間で用いた場合の音響特性を計測した。いずれのスピーカユニットも高域では60dB程度の出力音圧レベルが得られるが,低域の出力音圧レベルは低かった。スピーカとマイクロホン間の距離が0.2mの場合,暗騒音レベル16dBの計測室において出力音圧レベルのSN比が0dB以上となるのは,DTEC-30008では120Hz〜20kHz,ED-29689では170Hz〜20kHz,SR6438NWSでは260Hz〜20kHzであった。また,いずれのスピーカユニットを用いた耳栓スピーカも10kHz以下では無指向性であった。DTEC-30008は12kHz〜17kHzにディップが生じ,それらの周波数と深さが方位によって大きく変化した。他のスピーカユニットは10kHz以上でほぼ無指向性であった。いずれのスピーカユニットも印加電圧を増加すると大きな2次及び3次高調波歪が発生した。それらのレベルを基本波レベルよりも小さくするためには,DTEC-30008,ED-29689,SR6438NWSへの入力電圧はそれぞれ1V,250mV,550mV以下にする必要があった。これらの結果より,DTEC-30008,ED-29689,SR6438NWSは相反法による頭部伝達関数の計測に利用できることが分かった。各スピーカユニットの有効周波数範囲は,暗騒音レベルが16dBで距離が0.2mでは120Hz〜10kHz,170Hz〜16kHz,260Hz〜20kHz,1.0mの距離では170Hz〜10kHz,280Hz〜16kHz,290Hz〜20kHzであった。

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© 2011 一般社団法人 日本音響学会
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