日本音響学会誌
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論文
空間音響再生方式と音楽的文脈が距離感・奥ゆき感に与える影響について
亀川 徹丸井 淳史
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2016 年 72 巻 11 号 p. 684-695

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抄録

音響再生方式の違い(2チャンネルステレオ,5チャンネルサラウンド,そして高さ方向を含む7チャンネルサラウンド)と,メロディや伴奏といった音楽的文脈の違いが距離感・奥ゆき感に与える影響について2種類の実験を行って調べた。実験1では二重奏の演奏による素材とパルス音を用いて,どちらかの演奏者の位置を基準に,もう一方の演奏者の位置を前後させることで距離感・奥ゆき感がどのように変化するかについて,ME法(Method of Magnitude Estimation)を用いて比較を行った。その結果,映像がない場合には,メロディのように音楽的に分かり易い素材は奥ゆき感が大きくなるといったように,音楽的な文脈の違いによって距離感・奥ゆき感に違いが見られるが,映像がある場合にはそのような違いが見られなかった。実験2では,距離感・奥ゆき感の要因となる物理量として,直接音と間接音の比(DR比:direct to reverbratio)と音圧レベルそれぞれの違いが与える影響を個別に調べた。その結果DR比の違いによる距離感・奥ゆき感の方が音圧レベルの違いによる距離感・奥ゆき感よりも音楽的文脈から受ける影響が大きいことが示された。また,2チャンネルステレオは,DR比の違いが手掛かりになる場合は音源からの距離感が遠くなり,音圧レベルの違いが手掛かりになる場合は音源からの距離感が近くなるが,センタチャンネル,後方チャンネル,高さチャンネルといった再生チャンネルが増えることで,そういった距離感の偏りが補正される可能性が示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本音響学会
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