声優による日本アニメのキャラクタ演技音声はユニークな特徴を 持っている。本研究では,キャラクタ演技音声に関与する声質の特性を明らかにすることを 目的とし,音楽大学の声優コースの学生が物語やアニメの台詞を 四つのキャラクタで演じた音声データを 用いて,声質に関連する音響特徴に焦点を当てて分析した。 キャラクタ性においては,大局的な特徴として,基本周波数F0と調波性を反映したサブバンドHNRが,キャラクタ間の違いを捉えていることが示された。また,演技の表現性に関与して,キャラクタによらず,気息音発声,有声吸気音,りきみ発声などの非モーダル声質が発話末や 発話頭で局所的に出現することが頻繁にみられ,これらに関連する音響特徴として気息性を 反映したF1F3synとりきみ発声に関連したH1―A1が有効であることが示された。 なお,声優と学生の発声の比較より,局所的な声質変化の出現度の違いはあったものの,大局的な音響特徴はキャラクタごとに,類似した分布を 示しており,キャラクタ演技音声における発声法は 広く認識されていることが示唆される。 これらの結果は,キャラクタ演技音声が社会言語学的レジスタとして 捉えられることも支持している。