抄録
本稿は、基準時(=発話時)の少し前に終結した「事態(Event)」を修飾する韓
国語の副詞〈갓(Gat)〉に関する研究で、韓国の高麗大学が提供するコーパスから収
得した401 の用例を調査し、〈Gat〉構文の「時間性」と「モダリティ」の用法につ
いて考察を行ったものである。
まず、副詞〈Gat〉の修飾する事態の語彙的意味に注目し、事態が終結した後に現
れる「変化の結果」であることを明らかにした。そして、副詞〈Gat〉の修飾を受け
る「変化の結果」は、時間と共にその状態が変化していく事態であること、即ち‘程
度性’をもつ「変化の結果」であることを確認した。また、「変化の結果」について
は、基準時から経過した事態の経過時間(=‘時間の量’)だけでなく、時間と共に
変化した「変化の結果」の状態の量(=‘状態の量’)も測ることができると主張し
た。そして、話者は基準時から‘時間の量’だけに注目し、“それほど経過していな
い”と判断、評価するのが副詞〈Gat〉の「時間性」であり、‘状態の量’に注目し
“それほど変化していない”と判断、評価するのが副詞〈Gat〉の「モダリティ」で
あると規定した。