抄録
本稿は、「日本」、「大学」という環境的な文脈、そして「日本語を母語とする韓国
語学習者」という学習者の特徴を考慮しつつ、韓国語の学習項目と結びついた社会
的コミュニケーション活動を大学授業において実践できる教材を開発するための基
礎研究の一環である。本稿では、日本の大学における韓国語授業でよく使われてい
る入門用教材15 種を対象として、それぞれの教材で扱われている語彙項目につい
て検討した。その際、教材の末尾に掲載される語彙索引を活用することで、辞書の
見出し語にはなっていないものの、学習上の便宜を図るために一つの学習項目とし
て設けられた語彙単位も含めて考察できるようにした。まず、「日本」、「大学」とい
う環境的な文脈、そして「日本語を母語とする韓国語学習者」という学習者の特徴
に関わる語彙を抽出し、それらを韓国語能力評価の参照枠となる韓国国立国語院の
「国際通用韓国語標準教育課程」や、日本の「ハングル能力検定試験合格トウミ(公
式ガイド)」の語彙リスト、そしてアメリカのハワイ大学の韓国語入門教材、韓国ソ
ウル大学の短期課程用入門教材の語彙と比較した。また、これらの教材の学習時間
あたりの語彙数についても比較を行った。さらに、日本の15 種の教材のうち、半数
以上の教材で共通して用いられている語彙に関しては、品詞別に分けて分析し、二
つの韓国語参照枠の語彙リストや、先行研究で提案された「韓国語教育基幹語彙」
の初級の目録と比較し、検討を行った。韓国語入門教材において、どのような語彙
を示すべきかの問題は、どのような文法項目を使って、どのようなコミュニケーシ
ョン活動を実践するかという問題と関わってくる。今回の作業で得られた基礎語彙
のリストを生かして、今後の研究へつなげていくことにしたい。