学校メンタルヘルス
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大学生の過剰な外的適応行動と内省傾向が本来感におよぼす影響
益子 洋人
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2010 年 13 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

本研究の目的は,過剰適応傾向を「対人関係や社会集団において,他者の期待に過剰に応えようとするあまりに,自分らしくある感覚を失ってしまいがちな傾向」と定義した上で,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向(自分の感情を理解しようとする傾向)の影響を検討し,過剰適応的な人の本来感を高める方法を考察することであった。大学生を対象に質問紙を配布し,163名の回答を分析した。分析の結果,過剰な外的適応行動のうち,「よく思われたい欲求」および「自己抑制」は,本来感と中程度の負の関連を示していた。また,内省傾向は,本来感と弱い正の関連を示していた。この結果は,他者によく思われようと努力したり自分を抑えたりする行動は本来感を減少させるが,自分の感情を理解しようとする傾向は本来感を向上させると解釈された。ここから,過剰適応傾向の高い人の本来感を高めるためには,過剰な外的適応行動を間接的に軽減するため,その原因であるとされる見捨てられ不安を緩和する方法を開発していくことや,過剰な外的適応行動の低減が難しい場合に備えて内省傾向を高める働きかけを行うことが必要であると考察された。

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© 2010 日本学校メンタルヘルス学会
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