学校メンタルヘルス
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ショートレポート
小・中学校の特別支援教育コーディネーターのストレス
五浦 哲也
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2012 年 15 巻 2 号 p. 292-299

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抄録

【問題・目的】教育現場において教員のストレスの問題は深刻であり,毎年病気休職者が増加する中,2007年度より特別支援教育が導入された。さらに,そのキーパーソンとして特別支援教育コーディネーターが指名され新たな役割を担うこととなった。特別支援教育コーディネーターは,教育現場ではこれまでにはなかった多種多様な役割のため,新しいストレス状態が生み出されることが懸念される。そこで,特別支援教育コーディネーターがインクルージブ教育を実現するためにストレスに対して予防的な対策をとることができるようストレスの特徴を明らかにすることとした。

【方法】本研究では,筆者が北海道の小・中学校における特別支援教育コーディネーターのストレッサーに関する研究で行った小・中学校の特別支援教育コーディネーター1,000名の調査結果(有効回答率40.9%)を活用し,「教員間ストレッサー」「支援拒否ストレッサー」「専門性ストレッサー」「多忙ストレッサー」「校外サポートストレッサー」の5つのストレッサー間の相関と各ストレッサーとストレス反応との相関からストレスの特徴を明らかにすることとした。

【結果】「専門性ストレッサー」「多忙ストレッサー」は平均値からややストレッサーを感じていることが明らかになったが,それ以外のストレッサーは平均値が低かった。また,ストレス反応も平均値は低かった。各ストレッサー間には,弱いまたは比較的強い相関が認められた。さらに,各ストレッサーとストレス反応の間にはすべて比較的強い正の相関が認められた。

【考察】現段階では,ストレッサーやストレス反応の平均値は高くないが,各ストレッサー間において相関が認められたことや各ストレッサーからストレス反応に比較的強い相関が認められたことは,特別支援教育コーディネーターのストレスの特徴と考えられる。このことから,今後さらに特別支援教育が推進されていくことにより,ストレスが増大することが懸念される。そのため,ストレス軽減に向けては,国や教育行政による継続的・計画的な施策が必要であると考える。

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© 2012 日本学校メンタルヘルス学会
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