2013 年 16 巻 1 号 p. 19-26
【目的】本研究では,自己決定理論に基づいて,学習に対する複数の動機づけ成分を測定し,自閉症スペクトラム(ASD)児と定型発達児の動機づけスタイルの間に違いがあるかどうかを検討した。
【方法】最も得意な学習と最も苦手な学習の2つの条件で,ASD群と定型発達群のそれぞれ17名が,内発的調整,同一化的調整,取り入れ的調整,外的調整の4つの成分を含む動機づけ尺度に回答した。
【結果】得意な学習の条件では,下位尺度のいずれの動機づけ得点においても両群の違いは見られなかった。しかし,苦手な学習の条件では,ASD群の同一化調整の得点が有意に低かった。また,条件にかかわらず,4つの下位尺度から構成される自律性得点は,定型発達群よりもASD群で有意に低いことが示された。
【考察】これらの結果は,ASD児がより自律性が低い動機づけをもっていること,そして,そのような学習の動機づけスタイルには,同一化的調整,及び,いくつかの動機づけの複合的な成分が影響していることを示唆している。