【問題と目的】教員の生活の質(QOL)の低下が懸念されるが,本邦では国際的な評価尺度を用いた教員のQOL調査は行われていない。そこで,包括的な健康関連QOL尺度であるSF-36における8下位尺度および新規に提唱された3コンポーネント・サマリースコアを用い,教員のQOLを探索的に検討した。
【方法】教員群(n=82)と,教員群と年齢・性別を無作為にマッチングさせた非教員群(n=82)を対象とし,教員群と非教員群におけるSF-36の8下位尺度得点および3コンポーネント・サマリースコアの比較を行った。また,教員群のSF-36の8下位尺度得点および3コンポーネント・サマリースコアの特徴を検討した。
【結果】教員群と非教員群において,SF-36の差は見られなかった。教員群のSF-36の8下位尺度得点は,「心の健康」得点(48.1±10.1点)よりも,「日常役割機能(身体)」得点(45.1±11.5点)と「日常役割機能(精神)」得点(45.6±11.2点)が,日本人平均値50点をより下回った。教員群のSF-36の3コンポーネント・サマリースコアは,「身体的側面」得点(50.3±10.6点)と「精神的側面」得点(50.0±9.2点)は日本人平均値を示したが,「役割/社会的側面」得点(41.7±11.6点)は日本人平均値を下回った。
【考察】教員と非教員でQOLに差がなく,どちらも精神面でのQOLは比較的保たれていたが,役割機能のQOLが低下していた。また,SF-36の3コンポーネント・サマリースコア解析は役割機能のQOL低下をより明確化しており,今後のQOL研究に有用であることが示唆された。
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