学校メンタルヘルス
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資料論文
不登校経験のある定時制・通信制高校生の生活実態調査―不登校経験者と非経験者との比較より―
松井 幸太阿形 恒秀
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2014 年 17 巻 1 号 p. 60-72

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抄録

【問題と目的】現在,定時制・通信制高校は入学者が多様化し,小中学校で不登校を経験している生徒も多く在籍している。高校では学校不適応が中途退学につながりやすく,彼らにとって不登校からの立ち直りもしくは学校適応が一つの課題となっていると考えられる。そこで本研究では,定時制・通信制高校の生徒に対する生活実態調査より,日常生活や学校生活,学校満足感について不登校経験者と非経験者の特徴の違いを多面的に比較し,また不登校期間中の生徒の心境や過ごし方を把握することによって,不登校経験者の定時制・通信制高校への適応を促進し,不登校を未然に防ぐための示唆を得ることを目的とする。

【方法】A県内の定時制・通信制高校22校の生徒3,215名を対象に質問紙調査を行い,日常生活や学校生活,学校満足感,不登校経験について回答を求めた。

【結果】小中学校での不登校経験者と非経験者の回答を比較した結果,不登校経験者は非経験者に比べて,夜型の生活リズムであること,就労経験が少ないこと,同学年の友人や小中学校時代からの友人が少ないこと,小中学校における満足感が低いことが示された。さらに,不登校経験者は非経験者よりも,高校での学校生活においても登校しづらい傾向にあることが示された。

また,不登校経験を振り返る質問項目からは,友人関係や学習の躓きが不登校のきっかけとなっており,高校生活においては,環境の変化や友人関係の改善など阻害要因が減ったことにより学校の居心地がよくなったこと,また将来の目標がみつかるといった促進要因が増えたことが彼らの高校生活を支えていることが示された。

【考察】したがって,児童生徒の学校適応を支援するにあたって,日常的な生活場面における友人や担任との関係づくりを促進できる学級経営を目指し,教職員全体によるきめ細やかな学力保障の体制によって生徒の学習に対する疎外感を解消して

いくことのできる学校運営が求められる。

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© 2014 日本学校メンタルヘルス学会
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