学校メンタルヘルス
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資料論文
中学生の親を対象とした認知行動理論に基づく親トレーニング・プログラムの実践
三浦 正江
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2014 年 17 巻 1 号 p. 50-59

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抄録

【問題と目的】思春期は,親が子どもと良好なコミュニケーションをもつことが難しい時期である。しかし,中学生や高校生の子どもをもつ親を対象とした親プログラムに関する検討はほとんど行われていない。そこで本研究では,中学生の子どもをもつ母親グループに対して,認知行動理論に基づく親トレーニング・プログラムを実施した。

【方法】トレーニング・プログラムは週1回計5回実施された(参加者は母親17名)。プログラムは,(1)思春期の心理・行動的特徴と行動理論の基礎に関する講義,(2)日常生活における母親の子どもへの行動をセルフ・モニタリングすること,(3)ホームワークを用いた母親の行動変容,(4)ホームワークの実行に対するトレーニング・スタッフからのフィードバックやグループメンバーとの意見交換の4つの要素から構成された。プログラム効果を検討するために,プログラム前後に母親に対して,母親が子どもに与える家庭ストレッサー,ストレス反応,および子どもからの知覚されたソーシャルサポートに関する尺度が実施された。

【結果】まず,5週間測定されたセルフ・モニタリングの記録を検討した結果,子どもに対する母親の否定的行動と中性的行動は減少することが示された。さらに,t検定および効果量dを算出した結果(n=9,あるいは10),プログラム後には,母親のストレス反応と母親が子どもに与える家庭ストレッサーは減少し,子どもからの知覚されたソーシャルサポートは高くなることが示された。

【考察】予防的親トレーニング・プログラムの実施によって,母親の子育てスキルおよび母親のメンタルヘルスが改善されることが示唆される。最後に,母親を対象として学校で本プログラムを実施することの有効性が議論された。

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© 2014 日本学校メンタルヘルス学会
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