学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
資料論文
大学受験生の進路決定過程における精神的動揺とソーシャルサポートとの関進――進路不決断傾向の高い大学受験生に対する半構造化面接法による質的データを基にして――
神戸 威行北爪 直美菅野 純
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 17 巻 2 号 p. 162-174

詳細
抄録

大学受験生に対する通常のソーシャルサポートでは,大学受験に関する情緒的,あるいは実際的な情報支援等により,直接的な心理ストレスを軽減したり,間接的にストレスフルな状況に対する認知を変容させる効果があると考えられている。しかし,受験期におけるソーシャルサポートの意義についての多くの先行研究がソーシャルサポートが進路ストレスを低減させたり,進路決定を促したりする以外に,進路決定における精神的動揺に関連するなんらかの心理的負荷を与える可能性を指摘している。実際,筆者が経験した相談実践でも,大学受験生の受けるサポートがポジティブな側面ばかりでないケースが多く観察された。進路決定を促したり心理的負荷を低減しているとは言えない面が多く見られた。このようなソーシャルサポートにおける諸側面を明らかにするめために本研究では,進路不決断傾向の高い大学受験生を対象に半構造化面接調査を行い,進路決定過程における精神的動揺とソーシャルサポートとの関連について検討した。調査の結果,進路決定過程においてソーシャルサポートは,ストレス緩衝効果を通して決定を促すこともあれば,進路意識の未成熟や進路決定の経験不足も相まって,主体的に進路決定に関わるという問題焦点コーピングが機能しない側面もあることが明らかになった。また,同時に情動焦点コーピングとして回避的・一時的に心理的負荷の外在化と内在化を繰り返しながら対処を図るものの,結果的にはより心理的負荷を深めることに繋がり,適切には対処されていないことが明らかになった。さらに,大学受験時の進路決定過程に伴う精神的動揺は,心理的負荷の外在化と内在化を繰り返しながら循環的な構造を持ち,ソーシャルサポートの持つストレス緩衝効果を弱め,進路決定の促進に繋がっていない側面を持つことが明らかになった。

著者関連情報
© 2014 日本学校メンタルヘルス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top