学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
原著論文
東日本大震災被災地の児童生徒の心的外傷後成長(PTG)に関する研究―PTGの実態,及びレジリエンス,自尊感情,ソーシャルサポートとの関連の検討―
大沼 詩織藤原 忠雄
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2015 年 18 巻 1 号 p. 4-13

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抄録

【問題と目的】PTG(Posttraumatic Growth)とは日本語では心的外傷後成長と言い,心的外傷を負うようなつらい体験のなかから,より人として成長していくことを示す。本研究では,東日本大震災から3年が経過した時点での被災地の児童生徒のPTGの実態について調査し,さらに仮説モデルにもとづき児童生徒のPTGとレジリエンス・自尊感情・ソーシャルサポートの関連を検討することで,PTGの側面から教師として取り組むべき児童生徒の支援について示唆を得ることを目的とした。

【方法】2014年1~2月,東日本大震災で津波被害の大きかったA県B市の小学校4校の4~6年生,中学校3校の1~3年生,合計1,387名を対象とし無記名・自記式の質問紙調査を実施した。質問紙の構成は,子ども版PTG尺度,レジリエンス尺度,自尊感情尺度,ソーシャルサポート尺度とした。

【結果】PTG尺度各項目の平均点,各尺度の因子分析結果,各下位尺度平均値の校種・性差,PTG得点平均値の学年差が明らかとなった。また共分散構造分析によりPTGとレジリエンス・自尊感情・ソーシャルサポートの関連についての仮説モデルが支持された。

【考察】PTG尺度の平均点には,日本という文化的宗教的背景,そして東日本大震災の影響を受けていることが推察される。PTG得点の学年を追うごとの推移は日本の子どもの自尊感情と類似した傾向を示し,学年が上がるとともに低下するPTG得点が中3で上昇することから,子どもたちに将来の可能性や希望を伝えていくことの重要性が推察された。また共分散構造分析の結果から,子どもたちにレジリエンス・自尊感情・ソーシャルサポートを総合的に育むことが重要になること,そして自尊感情がPTGを支えるうえで根本的な基盤になることが示唆された。

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© 2015 日本学校メンタルヘルス学会
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