学校メンタルヘルス
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Print ISSN : 1344-5944
原著論文
中学生における“いじめ”に関する行動の諸相―「された」「した」「傍観」「制止」「サポート」の行動頻度と関連―
髙見 和至
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2016 年 19 巻 1 号 p. 14-27

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抄録

【問題と目的】本研究では,中学生におけるいじめに関する行動の調査を行った。いじめに関する行動は「した」「された」「傍観」「制止」「サポート」である。また,対象となるいじめの態様は,「仲間はずれ・無視」「からかい・悪口」「軽度の暴力」「重度の暴力」「金品被害」「ネットいじめ」の6つである。

【方法】31の中学校の1–3年生合計10175名に対して,第2学期中に経験したいじめに関する行動の頻度を回答させた。頻度の回答は,「まったくない」–「週に何回も」の5段階のリッカート尺度を用いた。サポートの3つ「挨拶」「慰め」「アドバイス」は経験の有無で回答させた。

【結果】「仲間はずれ・無視」や「からかい・悪口」の被害を受けた割合は,他の態様よりも高かった。また,「金品被害」や「ネットいじめ」の被害経験率は10%未満であった。性差と学年差は多くの行動で有意であった。ほとんどの行動において学年上昇とともに頻度が減少していた。約40%の生徒が傍観や制止の経験を有していた。6つの態様間の相関は中程度もしくは高い値をみせた。また,6つの態様ごとに4つの行動の関連をみると,弱から中程度の正の相関が認められた。

【考察】本研究の結果は,いじめる側といじめられる側の入れ替わりが中学生において日常的であることを明らかにした。また,加害生徒だけでなく被害を受ける生徒も,傍観や制止の経験を有していることが分かった。これらのことは,中学生のいじめが複雑な諸相を有していること,またいじめに関する行動の1つを改善することが防止に繋がる可能性を示唆している。

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© 2016 日本学校メンタルヘルス学会
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