学校メンタルヘルス
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原著論文〔実践研究〕
保育者を目指す短期大学生への行動理論に基づく指導プログラムが不適切行動を示す幼児への指導スキル向上に及ぼす効果
齊藤 勇紀土居 正城
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2016 年 19 巻 1 号 p. 28-39

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抄録

【問題と目的】保育現場においては,特別な配慮を要する子どもの保育や発達支援が課題となっている。しかし,保育者養成校(以下,養成校)においては,学生指導における発達支援の実践力に対する客観的な評価が行われていない。そこで本研究では,保育士や幼稚園教諭を目指している学生に対して行動理論に基づく講義と演習を行い,学生の指導スキルと省察記録の変化を客観的に評価することで,養成校における効果的な講義と演習の在り方について検討を行った。

【方法】学生2名が,行動理論に基づく講義とVTRフィードバックによる演習を受講した。その後,幼稚園で不適切行動を示す幼児1名(以下,対象児)を対象として,不適切行動の改善を目指した個別指導を行った。そして,シングル・ケース実験計画法に基づき,介入前後の対象児の標的行動と学生の指導スキル,省察記録の変化について効果量を算定し,査定を行った。

【結果】対象児の標的行動は増加が認められた。しかし,不適切行動は変化が認められなかった。また,学生の指導スキルは7つのカテゴリーのうち3つのカテゴリーで肯定的対応の増加が認められた。省察記録では4つのカテゴリーのうち3つのカテゴリーで肯定的な変化が認められた。

【考察】行動理論に基づく講義と演習は,幼児の不適切行動に対する学生の指導スキル向上と肯定的省察を増加させた。一方,学生は,対象児の不適切行動の先行刺激に対する指導スキルの獲得と機能分析の理解に基づく支援が困難であった。したがって,講義と演習による学生指導においては,内容に対する段階的な評価方法の構築が必要であることが示唆された。

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© 2016 日本学校メンタルヘルス学会
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