学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
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資料論文
教師が精神分析的視点を持つことの意義と可能性―投影同一視の視点により生徒理解が進んだ事例より―
吉川 修司
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2016 年 19 巻 1 号 p. 40-47

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抄録

【問題と目的】精神分析を教育に応用する試みは,エビデンスベースドな風潮の中でほとんど顧みられてこなかった。しかし,近年英国を中心として,教育における精神力動的な見方や,関係性を重視したアプローチが再び注目されるようになってきている。そこで本稿では,精神分析が教育に応用されてきた歴史を振り返ったうえで,クライン(Klein, M.)の「投影同一視(projective identification)」の概念を援用しながら実際の事例を考察し,教師が精神分析的な視点を持つことの可能性について論じた。その結果,精神分析の概念は,事例で起きている現象を理解するのに有効であると考えられた。今後,実際の指導場面で教師が行う生徒理解に,精神分析学をはじめとする深層的な概念や理論を援用する研究が進められることで,より多面的な理解が可能になると思われ,生徒支援の新たな視座が開ける可能性が示唆された。

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© 2016 日本学校メンタルヘルス学会
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