学校メンタルヘルス
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資料論文
小学校教員のワーク・エンゲイジメントへの影響過程についての探索的研究―地域差の検討の試み―
山田 早織長谷川 智子
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2016 年 19 巻 1 号 p. 60-72

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抄録

【目的】本研究では,小学校教員のワーク・エンゲイジメントに影響を与える要因についての影響過程を探索的に検討すること,さらにはワーク・エンゲイジメント及びそれに関連する要因に関する地域差を検討した。

【方法】複合市街地域である東京都内の一区(以下,A区)と,農山漁村地域である長野県内の一市(以下,B市)の小学校教員139名を対象に,ワーク・エンゲイジメント,周囲との人間関係,雑務の煩雑さ,子どもとその保護者の家庭での状況に関する質問紙調査を実施した。その後,12名の教員を対象に半構造化面接法による面接調査を実施した。

【結果】ワーク・エンゲイジメントに直接影響を与えていたのは,雑務感,保護者や地域からの協力感,教員としての勤務年数,学校より習い事や塾を優先している家庭での状況であり,同僚からのサポートは間接的に影響を与えていることが示された。また,A区の方がB市よりも保護者や地域からの協力感が低いこと,習い事や塾を優先している子ども,朝食をとらない子どもが多いことが示された。一方で,ワーク・エンゲイジメント,保護者や子どもからのサポート,雑務感,同僚からのサポートは,地域差がみられなかった。

【考察】ワーク・エンゲイジメントに直接的に影響を与えた習い事や塾を優先する家庭の状況は,授業内において大きな影響を与えると考えられる。具体的には,習い事や塾を優先する子どもは学校の授業に対する意欲が低く,それがクラス全体の意欲低下,教員の授業に対する意欲低下に繋がることが示唆された。一方,教員にとっての雑務感には精神的・物理的負担感があり,両方の負担感を軽減することがより高いワーク・エンゲイジメントに繋がると推察された。今後の展望として,ワーク・エンゲイジメントが低い教員へのサポート体制づくり,教員のメンタルヘルス従事者の地域特性を考慮した助言の有効性の検討,教員が他地域の取り組みを取り入れることの3点を検討していくことが望まれる。

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© 2016 日本学校メンタルヘルス学会
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