【問題と目的】学校現場は生徒の自傷行為への予防的介入的対応を行っていける貴重な場である。しかし,日本における学校現場での自傷対応に関する研究は,養護教諭やスクールカウンセラーを中心とするもの以外ほとんどない。そこで,一般教員が学校現場で自傷行為にどのように関わっているか現状分析し,教師が組織的に生徒の自傷行為に対応していく方法について考察する。
【方法】A県の5つの公立高校の教師を対象に自傷生徒への対応と教師としての意識に関する質問紙を作成し164名の教師から回答を得た。自傷生徒対応に関する質問項目の因子分析を行い,教師の意識と自傷対応との関連を回帰分析,共分散構造分析で分析した。さらに,自傷対応に関して教師集団のクラスター分析を行い,調査対象5校の自傷対応の相違について分散分析を行った。
【結果】教師の自傷行為への対応には「危機介入」「相談対話」「指導説諭」「連携見守り」の4因子が確認された。この自傷4対応因子には教師の自傷や教育への意識が影響を与えていた。クラスター分析の結果,自傷4対応因子すべてを行う「積極的対応クラスター」とすべてに消極的な「消極的対応クラスター」とに教師集団が二分された。また,自傷行為が多い定時制高校での対応が一番消極的だった。
【考察】自傷の4対応は相互に矛盾するものであるが,熱心な教師が矛盾するいくつかの対応を行う傾向にあった。また,教師全体でも各学校単位でも,教師は相矛盾する自傷への4対応を同時に行っている教師集団とすべての対応をしない教師集団に二分され,連携や役割分担がなされていないことが確認できた。このような現状を克服していくため,自傷への4対応を4つの役割分担と捉え,教師集団が連携して組織的に自傷行為に対応していくことの必要性を指摘した。