学校メンタルヘルス
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原著論文〔実践研究〕
教員養成課程に在籍する大学生の統合的葛藤解決スキルの向上を目指す心理教育プログラムの効果
益子 洋人
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2016 年 19 巻 2 号 p. 142-152

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抄録

【問題と目的】教師などの対人援助職を目指す青年にとって,他者との意見や価値観の違いから生じる対立を解決するスキルを獲得しておくことは,重要な課題である。他者との対立を解決するために重要なことは,自分も相手も納得できる解決策を考案することであり,そのためのスキルとしては,「統合的葛藤解決スキル」がある。しかし,このスキルの向上を目指す心理教育プログラムは未開発である。そこで,統合的葛藤解決スキルの向上を目指すプログラムを開発し,その効果を,統合的葛藤解決スキル,怒りへの不快感,過剰適応傾向(関係維持/対立回避的行動と本来感)の観点から検討することを目的とする。

【方法】per protocol解析を行うため,介入群の大学生30名,統制群の24名を最終的な分析対象とした。プログラムは全4回(1回90分)からなり,構成要素は葛藤解決理論,応答スキル,潜在的希望への注目,アンガー・マネジメント,アサーション,メディエーション,ロール・プレイであった。効果を検討するため,プログラムの実施前後に,理解度に関する質問,統合的葛藤解決スキル,怒りに対する不快感,関係維持/対立回避的行動,本来感を問う質問紙調査を実施した。

【結果】統合的葛藤解決に関する理解度をMcNemar検定によって分析した結果,有意な向上が見られた。また,群ごとの各尺度得点の変化量を比較した結果,介入群の統合的葛藤解決スキルの3つの因子と,怒りに対する不快感,過剰適応傾向の「期待に沿う努力」と本来感に,有意な向上が見られた。

【考察】統合的葛藤解決スキルを向上させる心理教育的プログラムは,スキルそのものを一定程度向上させるだけではなく,怒りに対する不快感や,過剰適応傾向の「期待に沿う努力」を低減し,本来感を向上させることが示され,教師などの対人援助職を目指す青年の専門性や心理的健康の増進に奏功する可能性が示唆された。最後に,本研究の限界と今後の課題を議論した。

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© 2016 日本学校メンタルヘルス学会
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