学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
資料論文
心理的支援に対する学校のニーズと少子高齢化,学校種,ニーズ内容との関連
安達 知郎
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 20 巻 2 号 p. 170-179

詳細
抄録

【問題と目的】少子高齢化は今後,学校現場に大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では,心理的支援に対する学校のニーズと少子高齢化,および,先行研究でニーズとの関連が統計的に明らかにされてこなかったニーズ内容,学校種との関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】青森県内の幼稚園115園,小学校312校,中学校168校,高等学校96校の相談業務をとりまとめている教員を対象として,質問紙法(郵送法)で悉皆調査を行った。質問紙では,心理的支援が行われる場面(学習面12場面,心理・社会面13場面,進路面10場面)を挙げ,各場面での支援に対するニーズを5件法で尋ねた。そして,各場面での支援に対するニーズを因子分析した上で,ニーズを従属変数,ニーズ内容(因子),学校所在地の老年化指数(高低),学校種を独立変数とした3要因分散分析を行った。

【結果】幼稚園52園,小学校203校,中学校102校,高等学校75校から回答を得た。因子分析の結果,ニーズについて,「心理・社会面への支援」,「学習面,集団活動への支援」,「進路面への支援」,「複合的な問題への支援」の4因子が得られた。分散分析の結果,ニーズ内容に関しては,全学校種において,心理・社会面,複合的な問題への支援がその他の支援よりもニーズが高かった。少子高齢化に関しては,高等学校において,少子高齢化が進んでいない地域が進んでいる地域よりもニーズが高かった。学校種に関しては,心理・社会面への支援において小学校,中学校が幼稚園よりもニーズが高かった。

【考察】ニーズ内容に関しては,スクールカウンセラー(主に臨床心理士)の専門性が,少子高齢化に関しては,少子高齢化が進んでいない地域における教員の負担と高等学校における教員の専門性の高さが,学校種に関しては,幼稚園における心理的支援に対する認知度の低さが重要な要因であると考えられた。

著者関連情報
© 2017 日本学校メンタルヘルス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top