学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
資料論文
スクールカウンセラーが遭遇する困難の特徴と必要とされるスキル
―困難を乗り越えるプロセスについての質的な研究―
本田 淳子田村 節子石隈 利紀
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2023 年 26 巻 2 号 p. 209-218

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抄録

【問題と目的】スクールカウンセラー(以下SC)が遭遇する困難と,困難を乗り越えるプロセスを明らかにすることは,SCがどのように職業的に発達していくのか,そのための指標を示す足掛かりとなり得ると考える。そこで本研究では,SCが遭遇する具体的な困難の内容とそれをどう乗り越えたかの変容プロセスを明らかすることを目的とした。

【方法】24名のSCに半構造化面接でインタビューを実施し,経験年数をもとに1~5年は初期,6~10年は中期,11年目以降はベテラン期という3つの段階に分け修正版グランデット・セオリー・アプローチで分析した。

【結果】分析の結果《なりたての頃や慣れない時期に自覚する無力感や不安,とまどい》,《自信ややりがいを感じ始める時》,《頼られ過ぎて忙殺される仕事量の多さ》,《考えが一致しない同僚と協働・連携する困惑》,《勤務中に相談できる人がそばにいない心細さと孤独感》,《愚痴を吐き出せるSCの仲間や心を許せる昔からの友人の存在》という6つのカテゴリーと18の概念からなるSCの困難の変容過程が結果図に表された。

【考察】SCの困難を乗り越えるプロセスは,経験年数で分けた3つの段階ごとに困難の特徴があり,その困難を乗り越えるために必要なスキルが示唆された。必要なスキルとして,初期には相談内容の情報共有や学校のニーズに合わせて動きを修正するスキル,中期には協働する相手である教員の職務を理解しSCの役割を明確に伝えるスキル・協働をする中で自分自身を振り返り内省するスキルが必要になることが示された。ベテラン期のSCは,困難に遭遇している最中であり困難を乗り越えた語りはなかったが,結果からセルフマネージメントのスキルが必要となることが推察された。

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© 2023 日本学校メンタルヘルス学会
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