学校メンタルヘルス
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資料論文
予備校生版学習課題先延ばし行動尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
近藤 和也石隈 利紀
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2023 年 26 巻 2 号 p. 219-227

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抄録

【問題と目的】好ましくない結果が予期されるにもかかわらず学習課題の遂行を自ら遅延させる行動を,学習課題先延ばし行動と呼ぶが,こういった先延ばしは,学業上のパフォーマンスを低下させ,精神的健康に悪影響を及ぼすと考えられる。主に大学生を対象とした先延ばし研究はこれまでにも行われているが,日常的に受験勉強主体の生活の中でストレスフルな状況下にある高卒予備校生を対象とした研究は少ない。そこで本研究では,高卒予備校生の学習課題先延ばし行動を測定する尺度を作成し,その信頼性・妥当性を検討することを目的とする。

【方法】東北地方のA予備校において,高卒予備校生の行いがちな先延ばし行動の項目を作成するために,生徒295名を対象に自由記述による予備調査を行った。次に,生徒560名を対象に「暫定版予備校生課題先延ばし尺度」の因子分析を行い,信頼性と妥当性を検討した。

【結果と考察】予備調査で得られた「暫定版予備校生課題先延ばし尺度」15項目について,本調査において探索的因子分析を行った結果,第1因子「随意的課題の遅延」6項目と,第2因子「時限的必須的課題の遅延」5項目の2因子構造からなる「予備校生版課題先延ばし行動尺度」が作成された。確認的因子分析の結果,まずまずの適合度が得られた。Cronbachのα係数は第1因子が.83,第2因子が.80であった。また,GPS日本語版との間で相関分析を行った結果,第1因子,第2因子ともに中程度の相関が見られた。以上より,本尺度の信頼性(内的整合性)及び妥当性(因子的妥当性,併存的妥当性)が確認された。

【結論】本尺度は,高卒予備校生の学習課題先延ばし行動を測定することを可能にし,学業及び受験生活支援の計画立案に寄与すると考えられる。

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© 2023 日本学校メンタルヘルス学会
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