2025 年 28 巻 1 号 p. 138-148
【問題と目的】わが国では,子どもの自殺が社会問題化しており,学校現場では,自殺予防の一環としてSOSの出し方教育の実施が推奨されている。しかし,エビデンスを伴う基本となるプログラムは管見の限り存在しない。そこで,本研究では,SOSの出し方教育の基本モデルの開発に向け,全2回から構成されるプログラムを作成し,中学生に与える影響を検討することを目的とした。
【方法】公立中学校に在籍する中学2年生,および3年生,計117名が本プログラムに参加した。両学年は2学級ずつの編成となっているため,中学2年生の1学級と3年生の1学級に在籍する生徒を介入群(59名)とし,他方の1学級を合わせて統制群とした(58名)。相談行動の利益・コスト尺度(永井・新井,2007)と援助要請意図を測定する相談行動尺度(永井・新井,2005)を効果指標とし,プログラムの実施前後における尺度得点を比較することで効果検証を行った。
【結果】分析の結果,相談行動の利益・コスト尺度の下位尺度である相談実行のポジティブな効果と無効性,そして,援助要請意図においてプログラムの効果が確認された。ただ,否定的反応については,本介入効果は認められなかった。
【考察】ストレスマネジメント,相談のメリット,SOSの受け止め方に関する3つの内容で構成されたプログラムの実施により,援助要請に関する認識や態度に肯定的な変化が見られた。このことから,SOS教育の実施においては,援助要請を相互作用として捉え,SOSを出す側,受け止める側,双方への介入が必要であることが示唆された。また,SOS教育のBasic Modelの開発にむけ,本研究の課題や今後の展望について議論がなされた。