近年、情報システム化が進むにつれシステムが開発されインプリメントされた後に使われなくなるという「システムの失敗」例が数多く報告されている。われわれは、このような失敗を招く要因の一つとして上流工程の要求定義の不十分さを考える。 本研究では、国内のある製造企業の組立てラインの実行監視を目的とした情報システム (Operation Management System, OMS)について調査分析したケースを紹介する。この中で、要求定義の活動をユーザと開発者の相互作用と捉え、対人的行動を明らかにするために質的な調査・分析の有用性を主張する。実際のISのインプリメントケースについて、インタビューや観察を通じて得られた質的データをM-GTAを用いて分析すると同時に、一般的な表記法であるUMLを用いて問題点を明らかにした。