抄録
日本の情報システムは経験に基づくノウハウや社会的文脈の中での暗黙知のような現場での実践的知識に基づいた情報処理システムとして設計されてきた。そのため、情報システムを取り巻く社会環境を敢えて分析するまでもなく、現行の機能システムを改善することに注力してきたといえる。このような状況にも拘わらず情報システムが機能している実情こそが日本の文化環境との調和であり、またその文化環境がシステムコンセプトの策定を形骸化させていると考えられる。本報告では、情報システム設計の枠組みである情報システム開発アプローチに関する社会的文脈とその射程についての歴史的経緯の概観を通して、情報システム設計の意義づけに関する日本の状況について考察する。