抄録
上高地,梓川左岸斜面での地質調査によって,重力変形体の内部構造が明らかになった.変形体の基岩は,ジュラ紀付加体美濃帯の主として泥岩からなる.層理面は北北東-南南西走向をもち,分水界の尾根にほぼ平行である.また地層は西に高角度で傾斜しており,これによって岩盤は地表面傾斜より面構造が急な逆目盤構造となっている.変形体内部では,その上部で岩盤のゆるみが大きいほど層理面傾斜が低角度となり,また下部では層理面が東傾斜となっている.したがって変形体は全体的にはS字状の断面構造をもつ.厚さ100 mあるいはそれ以上に達するこのような構造は,おそらく岩盤の弾塑性的な挙動による座屈あるいは塑性的な流動によって形成された.