抄録
工具の皮膜として用いられる硬質膜は、切削速度向上などに対応するために高硬度化が進んでいる。皮膜の硬度化に伴い、基材と皮膜界面に生じる応力が高まる傾向にあり、皮膜剥離などの原因となりうる。膜中の応力分布を評価する方法としては X-ray diffraction(XRD) が一般的であるが、界面付近のみの応力抽出は困難である。本研究では、応力評価に向けた第一段階の検討として、非破壊の状態で深さ方向の XRD 分析を行うことを試みた。深さ領域を制限するために試料表面のX線入射点、回折X線の取り出し点位置を制限するためのスリット状の開口部を持つX線遮蔽膜を形成し、マイクロビームX線を用いてスリットを介した XRD パターンの取得を行い、膜中での XRD パターンの分布の検討を行った。