2015 年 12 巻 p. 31-38
アスリートのメンタルサポートにおいて地域を越えた専門家同士のネットワークの必要性は述べられてきたが、まだ個々人のネットワークに頼っているのが現状である。国立スポーツ科学センター(以下、JISS)における精神科・心療内科および心理カウンセリング部門の13年間の統計では、外部リファー6症例、ネットワークがなくリファーできなかったのが5症例。首都圏以外からの受診・通院が36症例、14症例あった。つまりJISSは全国から集まったアスリートを適した場所でメンタルケアができるようコーディネートする役割もあると考えられ、この症例数は連携マップの必要性を改めて示す。しかしトップアスリートは遠征や合宿なども多いため継続的なケアが難しい場合が少なくない。本論では症例によりその連携によるケアの実際も報告し、彼らには地域を越えた連携が必要であり、1)連携者間の信頼関係、2)迅速かつ細やかな情報交換が成功の要因と考えられた。