スポーツ精神医学
Online ISSN : 2436-1135
Print ISSN : 1349-4929
症例報告
運動療法が頻回の自殺企図と症状の改善の契機となった治療抵抗性統合失調症の1例
宮本 聖也中島 和樹
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 18 巻 p. 64-68

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抄録

自殺企図が頻発し対応に苦慮したが、運動療法の導入を契機に症状と希死念慮が軽減した治療抵抗性統合失調症の1例を経験した。40歳代男性で19歳時発症し2回入院歴がある。幻覚・妄想が増悪し自殺企図で入院した。薬物療法が無効で自殺企図が頻発したため、電気けいれん療法(ECT)で軽快し退院。しかし直後に頸部を切り入院したが、幻聴が活発で希死念慮が強かった。転院し修正型ECT施行後、幻聴は軽減したが妄想が持続し再入院。しかし幻聴が再増悪し、自傷行為を頻回に認めた。病棟で卓球を始め我々から技術を学ぶと、初めて前向きな思考が生じた。さらにバドミントンやラジオ体操に参加すると、症状は徐々に改善し退院に至った。本症例で運動療法は、自尊心の回復とレジリエンスの増強に寄与し、病的体験と希死念慮を軽減し、生への希望を産出した。対応に難渋する重度の統合失調症患者でも、運動療法は試みる価値がある可能性が示唆された。

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© 2021 日本スポーツ精神医学会
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