2011 年 8 巻 p. 59-63
スポーツにおける外傷性の高次脳機能障害は多く症例報告されているが、臨床現場では診断が困難であることも多い。脳外傷例では損傷部位、損傷過程も多様であり、脳形態・機能画像においても責任部位を同定することが容易ではない。今回われわれは、スポーツ外傷によって特異的な記憶障害を呈した症例を経験した。右側頭部の打撲外傷のあと、記憶保持が3~4日しかできない、特殊な記憶障害であった。リハビリテーションも導入し、受傷後2年で高次機能は完全に回復した。回復前後で、FDG-PETにおいて低下していた側頭葉脳代謝の著明な改善を認めた。頭部外傷が脳に与える障害の神経科学的なメカニズム、および回復過程も含めた治療、リハビリテーションについては、研究の途上の段階である。今後の外傷性高次脳機能障害の機序解明、治療の発展が期待される。