症例は20代女性。持久系競技のトップアスリートである。地方都市を本拠地とする企業チームの中心選手である。練習と試合のため、一年のうちの半分は国内を転々とする生活である。練習によるアキレス腱の故障と体調不良が重なって、重要な大会で不本意な結果に終わった。このことに対する監督からの叱責が契機となって、うつ病を発症した。首都圏のスポーツクリニックを受診した結果、地元での療養と治療継続を勧められ、筆者が治療を引き継いだ。治療そのものはアスリート以外の症例に対するものと大きな違いはなかった。しかし、トップアスリートには、1)遠征が多い故に、同一の医療機関で継続的な治療を受けにくい、2)メンタルサポートに関わる精神科医が少ない、3)チーム内外の多くの人間が関わっている、という特有の事情がある2)。本稿は、アスリートを取り巻く人々との協働作業が効を奏し、競技復帰を果たした症例の報告である。