システム農学
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べき乗則による植生・土地利用区分図の解析、茨城県を例にして
塩見 正衛安田 泰輔堀 良通吉村 仁
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1998 年 14 巻 2 号 p. 84-93

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抄録

1.Taylor10)やHughes & Madden4)が開発・発展させたべき乗則が植生や土地利用区分の統計解析に利用できることを明らかにした。この方法を適用することによって、ある地域における植生・土地利用区分の出現率(頻度)が推定できるだけではなく、それぞれの植生・土地利用区分の地域内における地理的な偏り(分布の不均一性)を評価することができる。2.その一例は次の通りである。1980年に出版された茨城県の植生図(1:50,000)を用いて、県北山間地域(阿武隈山系)、県央御前山地域、県南土浦地域のそれぞれに1cm間隔のメッシュで30×30個のセルを設け、1cm2それぞれの区画内の植生・土地利用状況をすべて視覚的に読みとり、記録した。このような合い並ぶ1cm2の区画を4個ずつ集めて、15×15=225個の2cm×2cmの大区画を作ったときにべき乗則が適用できる。pをある植生・土地利用区分の1cm2への出現率、vを225個の大区画内でその植生・土地利用区分が出現した小区画数の分散とする。そのとき、その地域で出現したすべての植生・土地利用区分に対して、log[p(1-p)/4] を横座標に、log[v/42]を縦座標ににして2次元のグラフ上にプロットする。このプロットは直線回帰式により表され、直線回帰式はその地域における植生・土地利用区分全体を通してみた平均的な地理的不均一性の傾向を表す。また、それぞれの植生・土地利用区分の直線からのはずれの程度は、個々の植生・土地利用区分が平均的な地理的不均一性より大きいか小さいかを表している。この直線回帰式による表現を「べき乗則」と呼ぶ。3.上記3地域における、この統計学的モデルによる解析結果を要約すると次のようになる:県北山間地域は森林が優占していて、植生・土地利用区分のほとんどは大面積で分布している。県南土浦地域においては市街地が発達し、その周縁は水田・畑・果樹園を中心とした農業地帯であるが、やや細かく分断されている。県央御前山地域は、前2者の中間に位置し、森林も多いが、那珂川に沿って水田が開けている。水田は大きな面積で展開している傾向が強い。また、畑は山間・河川の中間地帯に大きな面積単位で広がっている。

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