システム農学
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14 巻, 2 号
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投稿論文
  • 広岡 博之
    1998 年 14 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    集約的な専業の家畜生産においては、糞尿問題は重要な問題で、特に窒素汚染の問題は深刻である。家畜生産と穀物生産の有機的な統合は、システム内での窒素の還元が可能になるため、糞尿問題を解決する手段として期待できる。本研究では、肉用肥育と水稲稲作統合生産システムに関する環境ー経済モデルを開発し、システム内の窒素還元率や生産費に対する飼料の質、飼養頭数および作付面積の影響をシミュレートした。窒素還元率は、糞尿中の窒素のうち水田に還元される窒素の割合によって表した。このモデルにおいては、水田からの稲わらは家畜の飼料と敷料として利用され、糞尿は有機肥料として水稲生産に利用される。シミュレーションの結果、飼養頭数が3頭の時、300アールの水稲作付面積ではほとんどすべての糞尿窒素が還元できたが、48頭の時には同じ作付面積を仮定した場合でも約3%程度しか還元することができなかった。肉用肥育と水稲稲作を統合したシステムは、肉用肥育のみのシステムよりも経済的に優れていた。一般的には、飼養頭数が多くなるほど生産費は削減できたが、飼料中の稲わらの割合が20%または25%の場合、狭い作付面積では、飼養頭数が3頭の場合より、6頭や12頭の場合のほうが生産費が高かった。このことは、肥育生産の生産費に対する飼養頭数や作付面積の影響が複雑に関与しあっている結果と考えられた。これらの結果より、肉用肥育生産と水稲稲作生産の統合は持続的農業の観点からは有益で、また経済的にも望ましいと推察された。
  • 鈴木 大助
    1998 年 14 巻 2 号 p. 74-83
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、インターネット上で日本国憲法、民法、刑法、特許法など日本の法律に関して多くのホームページが公開されている。しかしながら、これらのページは主として法律の主文を参照しているだけの機能であり、利用者は法律の概念や目的、関係政省令などとの詳細な法令構造を充分かつ簡単に把握することはできなかった。そのため、農家、普及教育担当者、学生、研究者、肥料生産業者、公的分析機関に在籍する肥料検査官などに対し、インターネットを介しWWWブラウザのフレーム機能を利用して、農業関連の法律に関する情報を効率的に提供するための新システムを開発した。このフレーム機能はそれぞれMicrosoft Internet ExplorerまたはNetscape Navigatorのバージョン3.0以降で提供されている。本研究の対象として肥料取締法を用いた。肥料取締法は肥料の品質保全と公正な取引の確保のために1950年に制定された。本システムは77個のHTMLファイルと66個のGIF画像ファイルから構成されている。これらのファイルは相互にリンクが張られ、肥料取締法の1つの条文と別の条文の間や、肥料取締法の条文と政令の条文、政令の条文と省令の条文、省令の条文と関係告示の条文との間のそれぞれのつながりの相互関係が明確にされた。本システムにより、利用者はWWWを介して肥料取締法の内容を容易に確認し、理解することができる。さらに、この システムは主としてHTMLで記述されたテキストファイルによって構成されているため、法律などの一部改正に伴う記述内容の変更などの更新は担当者が簡単に行うことができる。
  • 塩見 正衛, 安田 泰輔, 堀 良通, 吉村 仁
    1998 年 14 巻 2 号 p. 84-93
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    1.Taylor10)やHughes & Madden4)が開発・発展させたべき乗則が植生や土地利用区分の統計解析に利用できることを明らかにした。この方法を適用することによって、ある地域における植生・土地利用区分の出現率(頻度)が推定できるだけではなく、それぞれの植生・土地利用区分の地域内における地理的な偏り(分布の不均一性)を評価することができる。2.その一例は次の通りである。1980年に出版された茨城県の植生図(1:50,000)を用いて、県北山間地域(阿武隈山系)、県央御前山地域、県南土浦地域のそれぞれに1cm間隔のメッシュで30×30個のセルを設け、1cm2それぞれの区画内の植生・土地利用状況をすべて視覚的に読みとり、記録した。このような合い並ぶ1cm2の区画を4個ずつ集めて、15×15=225個の2cm×2cmの大区画を作ったときにべき乗則が適用できる。pをある植生・土地利用区分の1cm2への出現率、vを225個の大区画内でその植生・土地利用区分が出現した小区画数の分散とする。そのとき、その地域で出現したすべての植生・土地利用区分に対して、log[p(1-p)/4] を横座標に、log[v/42]を縦座標ににして2次元のグラフ上にプロットする。このプロットは直線回帰式により表され、直線回帰式はその地域における植生・土地利用区分全体を通してみた平均的な地理的不均一性の傾向を表す。また、それぞれの植生・土地利用区分の直線からのはずれの程度は、個々の植生・土地利用区分が平均的な地理的不均一性より大きいか小さいかを表している。この直線回帰式による表現を「べき乗則」と呼ぶ。3.上記3地域における、この統計学的モデルによる解析結果を要約すると次のようになる:県北山間地域は森林が優占していて、植生・土地利用区分のほとんどは大面積で分布している。県南土浦地域においては市街地が発達し、その周縁は水田・畑・果樹園を中心とした農業地帯であるが、やや細かく分断されている。県央御前山地域は、前2者の中間に位置し、森林も多いが、那珂川に沿って水田が開けている。水田は大きな面積で展開している傾向が強い。また、畑は山間・河川の中間地帯に大きな面積単位で広がっている。
  • 小川 茂男, 斎藤 元也, 美濃 伸之, 内田 諭, Mahmood Khan Nasir, Shafiq Muhammad
    1998 年 14 巻 2 号 p. 94-102
    発行日: 1998/10/10
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    解析対象地区はパキスタンの北部に位置し、天水農業が行われている。また、年降水量の約60%がモンスーンシーズンに降雨強度の強い雨として集中している。土壌侵食は降雨強度の強い雨によって発生しているが、面的に土壌侵食量を推定することは容易ではない。汎用土壌流亡予測式(USLE)が土壌侵食の推定に使われるが、ここでは現地で必要なデータを収集し、降雨データ、ランドサットTMデータ、地形図、土地利用可能図を用いてこの式に適用した。その結果、ランドサットTMデータの28.5mメッシュ単位で土壌侵食量を推定することにより、詳細な分布図が作成できた。また、土壌侵食が少ないのは農地と森林であり(平均で1.6~1.9 ton/ha/monsoon程度)、裸地で高い(平均で35.2 ton/ha/monsoon程度)。また、土壌侵食はモンスーンシーズンに集中して発生していた。他の解析結果を踏まえると、ここで求めた値は妥当と推察された。さらに、ランドサットTMと河川図から谷状に侵食の進んだ部分を抽出する手法が有効であり、衛星データなどを用いてUSLEから求めた土壌侵食量推定図と重ね合わせるとさらに有効な情報が得られることがわかった。ここで用いた方法は土地利用や環境の変化を推定する方法としても有効である。
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