システム農学
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地価水準区分別地域における地域農業資源の利用形態と外部効果
寺内 光宏清水 昂一
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1999 年 15 巻 2 号 p. 150-159

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抄録
地域農業資源の機能は、本来的機能である「農業生産機能」と、「洪水防止機能」「水資源涵養機能」「土壌浸食・土砂崩壊防止機能」「土壌浄化機能」「農村景観・保健休養機能」「大気浄化機能」等の多面的・公益的機能である「非農業生産機能」を有している。こうした多面的・公益的機能の効果は、当該地域における「居住環境保全機能」として発現し、居住環境水準に多大な影響を及ぼす。本論文においては、茨城県笠間市を事例として、地価水準区分別視点から、地域農業資源における外部効果発現過程の解明を行った。加えて、それら地域農業資源の外部効果の有無と、当該地域における経営耕地利用の差異の有無を確認した。農業資源が有する外部効果の発現は、地価水準区分別にみた場合、田、畑及び樹園地面積とも推計地価水準が高い既成市街地においては比較的小さいものの、推計地価水準が低位な地域においては明確に確認された。推計地価水準区分地域の経営耕地利用形態は、地価水準が高い中心地域の周辺から土地純収益が高く土地集約的な農作物が生産され、地価水準が比較的低位になるにつれて土地純収益が低い、土地利用型農作物の生産が行われていることが確認された。経営耕地利用形態の相違による多面的・公益的機能の発現に関して、地価水準が高い地域においては、「農村景観・保健休養機能」が高い農作物生産がなされているのに対し、地価水準が比較的低位な地域においては、「国土保全機能」が高い農作物が生産されており、極めて対照的であることが確認された。
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© 1999 システム農学会
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