システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
投稿論文
東北タイにおける天水田の米生産量推定のためのモデル開発
鈴木 研二後藤 章水谷 正一SRIBOONLUE Vichai
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2002 年 18 巻 1 号 p. 55-60

詳細
抄録

東北タイでは不安定な稲作が天水条件下で行われており、収量を決定する支配的な要因は水条件である。こうした状況のもとで稲作生産を定量的に分析するためには、様々な条件下での米の生産量をシミュレートし得るモデルが必要となる。既に筆者らは、斜面上の天水田群一列の水移動・貯留動態を再現する天水田水文モデルを構築した。そこで本研究では、この水文モデルで計算される水分条件を入力値として、米生産量を推定するモデルの開発を目的とする。このモデルは生育と収量の2つのサブモデルから構成される。生育サブモデルは、天水田水文モデルで計算された水田の水分条件から本田準備・播種、田植の開始時期を決定し、さらに生育ステージを推定する。収量サブモデルは、天水田水文モデルで計算された蒸発散比から、各生育ステージにおける水ストレス(旱魃)および生育期間の短縮による減収率から総減収率を推定する。筆者らの提案した水文モデルと以上の稲生育・収量モデルとを結合し、モデル化対象圃場においてシミュレーションを行った。このシミュレーション結果を調査の結果と比較・検討した。一般に水田群一列での収量は斜面の高位部ほど水分欠乏の影響を受けて減収する傾向にある。推定収量でもこうした傾向がおおよそ再現され、このモデルを稲作生産の定量的分析に用いることが有効であることを確認した。

著者関連情報
© 2002 システム農学会
前の記事
feedback
Top