システム農学
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18 巻, 1 号
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投稿論文
  • 1 地形、植生と土壌分布
    賈 書剛, 秋山 侃, 酒井 徹, 小泉 博
    2002 年 18 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    森林生態系における炭素の動態は、地球温暖化にも関与するため、その定量的な解明が待たれている。本研究では、岐阜県高山市にある冷温帯落葉広葉樹の試験林1ヘクタールを、10m四方、100区に区分し、地形、植生、土壌、微気象などを調査し、土壌の分布とその発達過程を解析した。その結果、樹木が多く林床のササが少ない所に乾性褐色森林土BA、BBが発達し、樹木が少なくササが多い所に弱湿性褐色森林土BEが発達していた。また、林内のリター層の厚さ分布とリター減少率は、土壌A層の厚さと正の相関が認められた。土壌の発達は地形に支配される土壌水の動態と深く関連し、頂部と南斜面には適潤性褐色森林土BDが発達し、尾根と斜面間稜線に近い凸形縦断面の斜面及び急斜面や西斜面は、乾燥し表面浸食を受けるため、乾性褐色森林土BA・BBとなる。ここではA層・全土層とも薄い。反対に谷底部には土層の厚い弱湿性褐色森林土BEが発達していた。本研究によって,試験林内における土壌型の面的分布や各土層の厚さが明らかになり、土壌圏の炭素賦存量推定のための基礎的知見が得られた。
  • 福本 昌人, 上村 健一郎
    2002 年 18 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    耕地面積の統計データと国土数値情報の土地利用データKS-202-1を地理情報システム(GIS)で利用して、小流域など任意の領域の耕地面積を推計する手法を提案した。土地利用データKS-202-1は、2万5千分の1地形図をベースとして1987~1989年に作成された約100mメッシュ単位の全国的な数値地図情報である。筆者らの提案した推計手法は、市町村単位の耕地面積の統計データをベースとし、土地利用データによる農地の空間分布の情報を補助的に利用する。この推計手法の精度推定を愛知県西部で行った。この地域では、細密数値情報という10mメッシュ単位の詳細な土地利用データが宅地利用動向調査の結果に基づいて作成されている。1997年の耕地面積の統計データとこの細密数値情報の1997年の土地利用データによる耕地面積の推計値を真値と仮定して、1997年の耕地面積の統計データと国土数値情報の土地利用データKS-202-1による1997年の耕地面積の推計値の誤差を評価した。その誤差率は、面積推計を行う区画の大きさが10km2の場合、田で14%、畑で33%であり、20km2の場合、田で12%、畑で24%であった。
  • 関川 清広, 小泉 博, 木部 剛, 横沢 正幸, 中野 隆志, 鞠子 茂
    2002 年 18 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    土壌温度と降水に対する土壌呼吸の日変化ならびに季節変化の依存性を明らかにするため、甲府盆地のブドウ園において土壌呼吸を測定した。測定にはダイナミック閉鎖チャンバー法を採用し、8チャンネル型土壌ガス自動採取装置(自作)を併用して多点連続測定を行った。日平均土壌呼吸速度は、秋期に2.6、冬期に0.9、春期に3.8、夏期に5.3 g CO2 m-2 d-1 であった。夏期の土壌呼吸は土壌水分にかかわらず、土壌温度(地表温、5cm深温度ともに)の指数関数として近似された。春期に土壌が比較的乾燥した期間を除き、秋期、冬期および春期の土壌呼吸は地表温と有意な相関を示さなかった。土壌呼吸と5cm深温度の相関は冬期に有意であったが、秋期と春期には有意ではなかった。秋期と春期のうち降雨時(6-12時間で4.5 mm程度)には、降雨前の同じ温度域と比べて土壌呼吸が高くなるバースト現象を示し、土壌呼吸-地表温は有意な相関を示さなかった。この降雨後の土壌呼吸のバースト現象は、降雨終了後およそ12時間で消失した。夏期の多雨時(12時間で57mm)には土壌呼吸のバースト現象が観察されなかったことから、そのバースト現象は少雨によって引き起こされる可能性が示唆された。土壌呼吸のQ10は、夏期には地表温より5cm深温度の方が高かったが、他の季節には土壌深度による違いは認められなかった。本ブドウ園の年間土壌呼吸速度の推定値は349.4 g C m-2 y-1 と他の農地生態系と比べて3/4から1/2程度と低い。これは、有機質肥料をほとんど施用しない本ブドウ園の栽培様式に依存して土壌有機物含量が低いことに起因すると考えられる。
  • 鈴木 研二, 後藤 章, 水谷 正一, SRIBOONLUE Vichai
    2002 年 18 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    東北タイでは不安定な稲作が天水条件下で行われており、収量を決定する支配的な要因は水条件である。こうした状況のもとで稲作生産を定量的に分析するためには、様々な条件下での米の生産量をシミュレートし得るモデルが必要となる。既に筆者らは、斜面上の天水田群一列の水移動・貯留動態を再現する天水田水文モデルを構築した。そこで本研究では、この水文モデルで計算される水分条件を入力値として、米生産量を推定するモデルの開発を目的とする。このモデルは生育と収量の2つのサブモデルから構成される。生育サブモデルは、天水田水文モデルで計算された水田の水分条件から本田準備・播種、田植の開始時期を決定し、さらに生育ステージを推定する。収量サブモデルは、天水田水文モデルで計算された蒸発散比から、各生育ステージにおける水ストレス(旱魃)および生育期間の短縮による減収率から総減収率を推定する。筆者らの提案した水文モデルと以上の稲生育・収量モデルとを結合し、モデル化対象圃場においてシミュレーションを行った。このシミュレーション結果を調査の結果と比較・検討した。一般に水田群一列での収量は斜面の高位部ほど水分欠乏の影響を受けて減収する傾向にある。推定収量でもこうした傾向がおおよそ再現され、このモデルを稲作生産の定量的分析に用いることが有効であることを確認した。
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