システム農学
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冷温帯林土壌圏の炭素動態
2. 現地詳細調査に基づく生態系炭素貯留量の推定
賈 書剛秋山 侃小泉 博
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2002 年 18 巻 2 号 p. 142-151

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抄録

森林生態系における炭素貯留量を正確に評価するため、岐阜県高山市で1ヘクタールを10 m×10 mずつ100区に分割した冷温帯落葉広葉樹林(樹齢約50年の二次林)を用いて、生態系を構成する7つの部分別の炭素量に関する詳細かつ系統的な現地調査を行った。この森林生態系の地上部を①樹木、②林床のササおよび③立枯れ木に、地下部(土壌圏)は④リター、⑤粗大有機物、⑥根系および⑦鉱質土壌に分けて炭素貯留量を測定した結果、それぞれの貯留量は1ha当たり71.4 tC、2.8 tC、5.3 tC、15.3 tC、4.6 tC、22.9 tCおよび318.3 tCと推定され、生態系合計では440.6 tCとなった。当森林生態系を植物体部分と土壌部分に分けると、107.0 tCと333.6 tCであった。本研究は100区画について生態系の各構成部分すべての炭素貯留量を実測しているため、推定結果を生態系構成部分(例えば地上部と地下部や、植物体と土壌や、植生・リターと粗大有機物・土壌など)や、地形類型および土壌類型などのいろいろな生態系の内部構成の立場から、読み直して検討できる点で利点があった。また、土壌炭素貯留量の推定方法の改善に関連して、石礫率の適用および計算に用いる土層の深さの影響についても論述した。本研究における推定の手法や結果は、現在世界中で実施されている地球温暖化に対応した炭素循環研究のうちの冷温帯林生態系の炭素貯留量推定の一研究事例として、位置付けられるものである。

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© 2002 システム農学会
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