抄録
近世が終焉を迎え近代化が始まる直前における明治10 年代に測量された迅速測図は、日本の農業的土地利用の研究にとって極めて重要な時期に作図された。迅速測図はGIS で定量的な解析に使用できるが、緯度経度は付されておらず、不規則に歪んでいるので、通常の地形図以上に幾何補正に注意が必要である。本研究では迅速測図をコンピュータに取り込み、幾何補正する方法を解説した後に、茨城県南部の図幅を対象に行ったGIS 解析から得られる土地利用変化の傾向を報告する。明治初期の茨城県南部の村落では樹林地と草地が面積の約60%を占めていた。1980 年代の現存植生図と比較すると、水田の継続性は他の土地利用に比べて高かったが、地目として認識される広い草地はほぼ消滅していた。