システム農学
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研究論文
可視・近赤外ハイパースペクトルデータを用いた水稲生育診断のための分光指数の選択
EVRI Muhammad秋山 侃川村 健介
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2008 年 24 巻 1 号 p. 19-29

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抄録

ハイパースペクトル情報による水稲生育の植生指数(本文中では区別するため、分光指数RI と呼ぶ)を選択するため、インドネシア・ジャワ島北部の水田で栽培試験と分光反射計測を行った。3品種、4施肥段階で水稲を栽培し、田植えから収穫まで11回、ほぼ1週間間隔で可視・近赤外ハイパースペクトル分光放射計を用いて分光反射を計測し、同時にサンプリングを実施した。得られた分光反射データで作成した6種類の分光指数により、水稲の葉面積指数(LAI)とSPAD 値を推定した。解析に用いた波長帯は400-980nm(117波長)、対象とした分光指数は、単波長反射係数、一次微分値(FDR)、比分光指数(RRI)、正規化分光指数(NDRI)、再正規化分光指数(RDRI)、および土壌補正分光指数(SARI) の6種類であった。このうち2波長を用いる4種の分光指数については、作成したプログラムにより6,786 通りの組合せを検証し、最適組合せを選択した。その結果、LAIに対する決定係数R2は0.883から0.908、SPAD値のR2は0.667から0.771 の範囲にあった。LAI推定の有効波長帯の多くはレッドエッジ帯(715-730nm)であったが、最も相関の高い波長組合せは835nm と720nm を用いたNDRI(R2=0.908)で、SARI(R2=0.906)がこれに次いだ。これに対してSPAD 値の推定には715nm と720nm を使ったSARI(R2=0.771)が最も高く、同波長によるNDRI(R2=0.705)がこれに次いだ。検証用データセットを用いた結果でも高い相関が得られたことから、ハイパースペクトル分光放射計により、LAIとSPAD値を推定するための波長帯と分光指数を効率的に選択できると推定された。これらの基礎データは、将来ハイパースペクトル衛星のデータが得られるようになると、適切な施肥や栽培のための管理情報を提供できるようになると期待される。

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