抄録
著者らの研究グループでは、リモートセンシングによる流域圏生態系の構造と機能の時空間変動の把握を目標の一つとしている。流域圏スケールにおけるシステムとしての生態系を理解するには、生態系機能の空間変動と時間変動の両方を把握することが必要である。流域圏スケールの空間変動、時間変動の把握に関しては、それぞれ数m~数10mの空間分解能、毎日~毎週程度の時間分解能が適していると考えられ、それらを満足する分解能を持つ衛星データが必要と考えられる。しかし、現状では空間分解能、時間分解能の両方を1機の衛星でまかなうことは困難であり、i) 複数の高空間分解能衛星を用いて時間分解能を向上させる手法、ii) MODIS 等の低空間分解能・高時間分解能衛星と、高空間分解能衛星データを組み合わせて、高時空間分解能データを入手、作成する手法に関する検討が、流域スケールにおける衛星データを用いた生態系機能評価に関しては重要になってくると考えられる。本論文では、上記の流域スケールにおける衛星リモートセンシングデータの時空間分解能に関する検討結果と、筆者らが把握した流域圏での生態系の構造と機能について述べる。