抄録
近年、様々な分野で衛星リモートセンシングデータを使用した研究が行われている。しかしながら、温暖化問題に関連した植生変動や炭素循環などを扱った、グローバルスケールでの研究では、衛星リモートセンシングデータが捉えた情報が、地上の状態を正確に反映しているかどうかの詳細な地上検証は十分に行われていない。岐阜大学21世紀COEプログラム「衛星生態学創生拠点」では、このような問題を解決するために、詳細な地上観測と衛星観測、さらにはモデルをリンクさせることを目指し、岐阜県高山市の大八賀川流域を対象として様々な地上検証データの取得を行っている。本研究では、これらの中から、(1)農地におけるフェノロジー観測、(2)指標木を用いた植生フェノロジー観測、(3)デジタル画像を用いた3種類の植生フェノロジー観測手法について検証した。(1)では、農地の違いにより現存量やLAI(Leaf Area Index)に大きな差があり、その変動パターンも異なることが分かった。また、(2)では、オニグルミ指標木のフェノロジー変化を観測する手法を提案し、標高によるフェノロジー変化の違いを観測することが出来た。さらに、(3)では、簡易的に取得したデジタル画像を解析することにより、展葉や黄葉・落葉のイベントを判定することが出来た。これらの手法を用いることで、農地と森林域の地上フェノロジー観測にとって有用な情報が得られることが明らかとなった。