抄録
予備的調査によりアイガモ水田ではアイガモの過剰により無立毛区域「踏み池」が発生し、一方アイガモの不足により雑草が繁茂することが確認された。アイガモ水田における水稲・雑草管理を適正に行うためにはアイガモの行動制御が重要と考えられたことから、アイガモシミュレータ開発の前段として、実際のアイガモの位置、個体間距離、移動距離を測定する手法を開発した。アイガモの位置はアイガモ水田をカメラで鳥瞰図のように撮影し、田植機で移植した稲株を手がかりとして測定した。実測のアイガモの移動距離をパラメータとし、1)個体はランダムに移動する、2)近隣の数個体の重心に向かって移動する、3)滞留により環境が悪化するので良い環境を求める、の3項目を移動の原則とするシミュレーションプログラム(Qoid)を開発し、大小規模のアイガモ水田におけるアイガモ群遊泳のシミュレーションを行った。その結果、仮想のアイガモは水田内を隈なく遊泳するとともに個体間距離は実測値に近いものとなり、また近隣個体数を増減させることにより群の大きさを制御することができた。様々な形状の水田に対して仮想のアイガモが遊泳する様子を再現することができ、実際のアイガモ水田の設定、運営に示唆を与えると考えられた。