システム農学
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研究論文
中国典型生態系における現地調査による窒素収支モデルの諸パラメータの同定
劉 晨王 勤学雷 阿林楊 永輝欧陽 竹林 躍明李 彦王 克林
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2009 年 25 巻 1 号 p. 35-44

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抄録

人間活動(食物消費、排泄物の排出、農作など)が窒素フローに及ぼす影響を明らかにするため、現地調査を行って中国の6 つの典型的生態系における地域窒素収支モデルに関わる諸パラメータ(人間が各食物から摂取する窒素の量、人間が排泄物として土壌や河川への排出する窒素量、農作で主に使われている窒素化学肥料の種類及び割合、農副生産物および家畜糞尿に含まれる窒素の流出ルートなど)を同定した。1 日1 人当たり各食物から摂取する蛋白質量の総平均値は107g/人/日であった。各生態系間の蛋白質摂取総量については有意な差がなかったが、各食物からの蛋白質摂取量については、卵類を除き、有意な差が見られた。その差異は経済の格差以外に、地域の特性、風土、習慣などの違いを反映していることが示された。また、都市化の進行によって、人間排泄物の土壌還元率が減る一方、水域排出率が増加していることが分かった。人間の排泄物の環境への潜在窒素負荷量としては、都市部では年間1 人当たりおよそ1.02 kg-N が土壌へ、5.49 kg-N が水域へ、農村部では年間1 人当たりおよそ4.33 kg-N が土壌へ、1.60 kg-N が水域へ排出されることとなり、都市部と農村部の間に大きな差があることがわかった。さらに、化学肥料の中、最も使われているのは尿素と複合肥料となり、広範囲の灌漑畑農業システムと平野水田農業システムでは、肥料種類の多様化が見られた。水田農業システムとオアシス農業システムでは、わらなどの農副生産物の多くは、燃やす、あるいは元肥と一緒に混ぜて土壌に還元する場合が多く、灌漑畑農業システムにおいては麦わらなどの農副生産物の7 割以上は回収され、家畜の肥料として利用されていた。家畜の糞尿のほとんどは耕地や牧草地に還元されているが、飼養規模が大きくなると、放棄されるケースもあった。

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