システム農学
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研究論文
食品廃棄物のコンポスト化による油分の分解
金 元淑入江 満美山口 武則牛久保 明邦
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2009 年 25 巻 2 号 p. 103-109

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抄録

経済発展の著しい中国では、現在、生活水準の向上に伴って、都市ごみ中の食品廃棄物含有量が増加しつつある。食品廃棄物は分解が速いため、腐敗し易く、悪臭の発生を伴うなどの特徴から、都市ごみ処理に困難をもたらしている。そのため、都市ごみ中の食品廃棄物をコンポスト(堆肥)化することは中国の現状に適した有効な処理手段の一つと考える。しかし、現在、中国ではシステム化されたコンポスト化施設や優れた技術がないため、品質が良く、有害物質を含まないコンポスト製造技術が望まれる。さらに、中国の都市ごみ中の食品廃棄物には事業系由来のものも含まれており、油分の含有量が高いものが存在するため、安全なコンポスト製造法の確立が必要不可欠である。本研究では、食堂の食品廃棄物に油分を0~35%(乾物当たり)添加して、簡易コンポスト化装置かぐやひめを用いて1次発酵、ハウスで2次発酵させる方法でコンポスト化を行い、食品廃棄物中油分の分解状況を追究した。また、事業系の食品廃棄物には塩分も含まれることから、塩分(NaCl)も0~12%(乾物当たり)添加して、同様の手法でコンポスト化を行い、塩分濃度による油分の分解状況を追究した。さらに、製造されたコンポストを用い、発芽試験および幼植物栽培試験を行い、製造コンポスト中の油分が作物の生育に及ぼす影響を調べた。温度変化からコンポスト化が順調に進行したこと、製品コンポストの化学成分分析の結果から塩分無添加区で油分はコンポスト化によって0.3~3.7%にまで分解されたことが示された。生物検定の結果から塩分無添加区では油分を43%まで含有しても製品コンポストは植害を示さず安全であることが示された。また、食品廃棄物の原料中に塩分8%含有の際は、油分14%まではコンポスト化によって油分が1.5%まで分解したが、塩分14%含有の際は、油分4.4%がコンポスト化によって1.6%まで分解するほか、油分14~34%は、コンポスト化後コンポスト中の油分濃度は11~14%にとどまった。

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